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ニュージーランドと映画の話 —クジラの島の少女 & ミルクのお値段

Pictures from New Zealand

2013年12月にニュージーランドへ旅行に行きました。首都ウェリントンに10年近く住んでいる日本人のかたとお会いする機会があって、ニュージーランドでの暮らしについてお伺いすることができました。話は、日本とニュージーランド、それぞれの国の話になり、よく覚えているのが「ニュージーランドに日本の映画はあまり入ってこない。」「日本にニュージーランドの映画はあまり入ってこない。」という双方向の繋がりのなさでした。映画とニュージーランドの両方が好きな私にとってはさびしいお話。

日本の場合は、アメリカの映画制作会社が資本になっているニュージーランドで撮影や制作がされた作品を見ることができます。「ロード・オブ・ザ・リング」3部作や「ラスト・サムライ」などは日本でもヒットしましたし、「ホビット」3部作の第2部「竜に奪われた王国」は現在劇場で公開しています。「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の成功で、ニュージーランドで撮影だけでなくポストプロダクションまでされるようになり、Kiwi(ニュージーランド人のこと)が関わっている作品を観れるようになりました。ですが、日本にとっての邦画のように、ニュージーランドで制作された映画となると、そう多くないように思いますし、残念ながら多く知りません。

知っている作品の中でお気に入りがふたつあって、両作品ともに何度も鑑賞しています(実はサウンドトラックも持っています)。もちろん、ニュージーランドということを抜きにしても素晴らしい作品なので、ニュージーランド映画を知るきっかけにお読みいただけるとうれしいです。

お気に入りのニュージーランド映画

クジラの島の少女(2002年)

原題は「Whale Rider」。ニュージーランド人のウィティ・イヒマエラの同タイトルの原作が映画化されたもので、原作は日本語でも読むことができます。

「クジラの島の少女」は、12歳の少女を演じたケイシャ・キャッスル=ヒューズが2004年のアカデミー賞で史上最年少で主演女優賞にノミネートされたことで、覚えている方もいるかもしれません。

ニュージーランドの原住民のマオリ族のある家族の、族長である祖父と女の子の孫の物語。「クジラに乗ってやってきた」というマオリ族の伝説を信じ、民族の伝統を守ろうと頑な祖父は、自分の孫娘に”クジラ乗り(Whale Rider)”という伝説の勇者の素質があることを認めません。男性が引き継ぐものという言い伝えから、孫娘を疎外するようになります。

キャストの全員がマオリ族の血をひいているということで、リアリティと力強さのある作品です。ニュージーランドの色の濃い色彩が、物語の舞台となるマオリ族の海辺の小さな村を引き立てています。

心に明るい、爽やかな希望の灯るいい作品です。

監督はニキ・カーロ。ウェリントン出身で、この作品のあとシャーリーズ・セロンが主演をつとめる「スタンドアップ」でハリウッドデビューしています。

ミルクのお値段(2000年)

「クジラの島の少女」とは一転して、こちらはニュージーランドの自然が生かされたロマンチックなラブストーリーです。喧嘩もしない仲のいい恋人同士が、結婚を目前に控えながら、不思議な出来事に巻きこまれ、絆を試されるような展開になってしまいます。というか、結婚はほぼ破談に…。

原題は「The Price of Milk」。邦題と同義ですね。タイトルにある「ミルク」とは、主人公の恋人ロブが117頭の牛飼いであり、牛や自分にとって大切なものの「価値」を比較しあうシニカルさのある作品です。

現代的でありながらもファンタジックな心理描写の映像がお気に入り。主人公のルシンダがウェディングドレスとしてインドの民族衣裳であるサリーをまとい、草原を走りまわる姿は詩的な美しさがあります。

こちらの監督はハリー・シンクレア。実はこの方は「ロード・オブ・ザ・リング」でサウロンの指を裁ち落とし指輪を奪い、それを捨てなかった人間族のイシルドゥアとしてカメオ出演しています。また「ミルクのお値段」でロブを演じているカール・アーバンが「ロード・オブ・ザ・リング」3部作でエオメルを演じています。

役の獲得についてカール・アーバンがこう語っています。

僕は、ピーター・ジャクソンの友人であるハリー・シンクレア監督の“ミルクのお値段”という映画に出ているわけですが、ハリー・シンクレアがピーター・ジャクソンに、そのラッシュを見せる機会があったらしく、ある日突然ジャクソンから電話がかかってきて…もちろん二つ返事で、OKしたわけです。

「ミルクのお値段」公式Webサイト

カール・アーバンのエオメル役は甲冑をまとった時の相応しさや騎馬民族を率いる人物としての声の素晴らしいです。ニュージーランドのフィルムメーカー同士のつながりから、発掘された好例ですね。

▽ エオメルを演じているカール・アーバンの美声をお聞きください。

今後観たいニュージーランド映画

乙女の祈り(1994年)

ニュージーランドのクライストチャーチで1950年代に実際に起こった事件が題材。監督は「ロード・オブ・ザ・リング」をつくる前のピーター・ジャクソン。奥さんであるフラン・ウォルシュが脚本。有名どころでは「タイタニック」以前のケイト・ウィンスレットが出演しています。

乙女の祈り – 映画.com

TOPLESS(1997年)

「ミルクのお値段」以前のハリー・シンクレアの作品で、初の長編映画。ルシンダを演じたダニエル・コーマックが出演。予告編のテンポが軽快で気になるところですが、日本ではDVD化さえされていない模様。観れません。

TOPLESS – 映画.com

猫は、なんでも知っている(2002年)

ハリー・シンクレアの「ミルクのお値段」後の作品。ポスターの左側の男性、ニュージーランドの俳優ディーン・オゴーマン(「ホビット」シリーズでドワーフのフィーリ役)が出演していますが、やはりDVDが発売されていない模様。

ニュージーランド映画の情報が欲しいです!

10代から20代の最初の頃、映画レビューを載せるサイトをつくっていたことがありました。映画は情報をまとめたり、集めていると、良品と出会える機会が増えますし、自分の感度もあがった体験を覚えています。

昨年訪れて大好きになった国を、映画を通じてもっと知りたいです。私のニュージーランド映画の知識はピーター・ジャクソンが起点となっていますが、もっとたくさんの作品を知れますように。また、日本で観れる機会に恵まれますように。